King Kong
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King Kong 11/8(木) 18:30 Broadway Theatre 3F L1 $49 当日BOX OFFICEで購入
ある意味今季一番の注目作ともいえるKing Kong、木曜のソワレが18:30公演という通常より早い時間なのはオープニング・ナイトだったから。
オープニング・ナイトは関係者のみで一般売が無いことも多いのだが、残念ながらチケットの売上が芳しくないこともあってかRUSHチケットまで出ていた。しかも劇場10時到着でもさほど列は長くなくRUSHチケットも買える状況。ただRUSHは3Fの後方で$49の席の方が少し前の方だよと言われたのでそちらを購入。最もチケットは売れてないわけだから、普段のRUSH席は1F席を出していそうな気もする。
オープニング・ナイトを見たのは初めてだったが、3F席とはいえ流石にドレスアップした方もそこそこ見られたのが新鮮。
正統派ミュージカルしか見たくないという方にはおすすめしないが、新しいものが見たい人には大いに見る価値のある作品だ。
(以下ネタバレ有りなので、見る予定の人は注意)
巨大なパペットとそれを操る黒子たち
これはかなり評価が分かれる作品だと感じた。はっきり言ってミュージカルではない。もちろん歌もダンスもあるけれど一番の売りは巨大なパペットであるキングコングで、そのキングコング登場シーンにほとんど歌はない。(もちろん歌わないw)それゆえミュージカルシーンとKing Kongパートがきれいに分離していて、一粒で二度オイシイとも言えなくもないが全体としてちぐはぐした印象は拭えない。
じゃあつまらないのか?といえばそうでもないんだなぁ~
いわゆるミュージカルファンからは総スカンを食らうかもしれないが、巨大なパペットを動かす黒子の技は素晴らしい。あれは間違いなく生で見る価値がある。War Horseの馬と同じでキングコングの各可動パートを黒子が動こすのだが、War Horseの馬の何倍もの大きさがあるため動かす人間も10人以上いるらしい。
その操作はパーツを下から持ち上げて動かすだけではなく、キングコングの背中にある足場を登り背後から操作するなどとにかく多彩。更には数多くのロープが舞台上方の支点を経由しキングコングにつながっており、そのロープを下から引っ張ることでスピーディでダイナミックなアクションを実現しているのだ。
中でも圧巻なのがキングコングが腕を振り上げるアクション。腕につながるロープを下へ引っ張るのだが、この時黒子はコングの背中によじ登り肩の辺りからステージに飛び降りるわけ。このアクションはかなりインパクトがあり、間違いなく大きな見せ場になっている。あれだけの大きさだからキングコングの腕の重さもかなりのものだろうし、ステージ上から人力で引っ張り上げるだけではスピード感が出ないのだろう。そこを逆手に取った見事な演出だ。黒子がキングコングをよじ登ることでそのパペットの大きさが強調されるし、肩口からステージ上へのダイビングしテコの原理を使ってキングコングの腕を引き上げることで重量感のあふれる動きが実現できる。さらにはこの一連のアクションが見ていてかっこいいのだ。仮にパーツの重量を軽くして黒子の腕の力で引っ張り上げることで同じアクションが実現できたとしても、あれ程の演出効果は得られないだろう。(実現可能かどうか分からないが)
唯一残念なのが、ステー上にいる黒子がキングコングの動きの全てを直接操作するのではなく、一部メカトロニクスを利用していること。おそらく目の動きなど顔と首は遠隔操作なのだろう、カテコで黒子が挨拶するときにバックスクリーンに別室で操作を担当するオペレーターが映っていた。
とはいえキングコングのダイナミックな動きとそれを操作する黒子たちの巧みな技がこの舞台最大の見どころだ。
そのために登場キャラクターの中ではキングコングに最も感情移入できるようなストーリーになっている。映画は一番最初の1933年版しか見ていないが、少なくともそこではキングコングは悪役というか怪獣的に描かれていた。それを見世物にしようとニューヨークに連れてくる人間サイドも決して善ではなかったが、ミュージカル版では完全にキングコングは不幸な被害者として描かれている。後の映画版に近いストーリーのものがあるのかもしれないが、キングコングとそれを動かす黒子を主役に据えるためにこのストーリーをチョイスしたことは間違いないだろう。
カテコの挨拶もコングにさらわれる役の女優の後、一番最後にキングコングと黒子達は登場する。初日なんで出演者は花束をもらっていたがキングコングにも大きな花束がw
キングコングを操る黒子の方々はトニー賞では何らか形で評価されるとは思うのだが、できれば”キングコング”として主演男優賞にノミネートされて欲しい。(受賞はしなくてよいw)
その他の気付き
最近のミュージカルでよく見る映像による背景描写。あれが個人的には悪印象でアナログなセットや背景描写が好きなのだが、この作品に関してはかなりうまく利用していると感じた。キングコングはあまりにも巨大なので実際にステージ上を縦横無尽に動かすわけにはいかず、どうしても背景側を動かす必要があるのだろう。
それに序盤の船のシーンなど映像に頼るだけじゃなく大掛かりなセットも利用しており、予算削減のために映像を用いてるわけでもなさそう。この船上シーン、ステージ上に柵やワイヤーをおいて船の甲板を表現するというよくある舞台演出かと思いきや、その部分の床がせり上がり実際にリアルに船上の甲板が現れるという凝った仕掛けになっている。
あと意外に群舞のシーンに見応えがあったり、劇中でキングコングを見世物として一儲けを企む出し物がBWミュージカルだったりするのは、この作品がBWで上演するにふさわしいミュージカルであるというアリバイづくり?などと思ったりもしたw
今後の展開
BWでのロングランは難しいだろうが、プロデューサーサイドもそれは分かっているのではないか?BW上演の看板を掲げた国内ツアーでは同時期に多くの作品が上演されるわけではない地方の特性と映画の知名度でそれなりに客が入るような気もする。
それ以上にKing Kongが似合うのはラスベガスだと睨んでいる。ラスベガスではカジノリゾートという特性もあってか、オペラ座の怪人などのBWミュージカルが90分の短縮版で上演されていることが多いようだ。King Kongも90分にシェイプアップし(いくらでも削れそう)、ラスベガスで上演するのはアリだと思うしきっと実現するんじゃないかな?(初見の一観客が考えるかとなど当然プロデューサーサイドも考えているはず)