トニー賞2019予想!

   

今年もやります!(ストレートプレイは見ていないのでミュージカルに関係ある部門だけ)
ネタバレになる部分もありますのでご注意を。

まず各作品のノミネート数は以下の通り。

Hadestown – 14
Ain’t Too Proud – The Life and Times of the Temptations – 12
Tootsie – 11
Beetlejuice – 8
Rodgers & Hammerstein’s Oklahoma! – 8
The Prom – 7
Kiss Me, Kate – 4
The Cher Show – 3
King Kong – 3
Be More Chill – 1

今シーズンの新作でGettin’ The Band Back Together, Head Over Heels, Pretty Woman はノミネート無し。前2作品は短命で既にクローズおり予想の範囲内だが、Pretty Woman のノミネート0は少し酷い。
Gettin’ The Band Back Together は秋の遠征前にクローズしたため残念ながら未見。その他の作品は一通り見ている。

以下、予想と希望に印をつける。

Best Musical

“Ain’t Too Proud: The Life and Times of the Temptations”
“Beetlejuice”
“Hadestown”
“The Prom”
“Tootsie”

”The Prom”押しだけど”Hadestown”で決まりなんだろうなぁ。
”Hadestown”は全体的な完成度も高いし新しさもある。”The Prom”はLGBTQというテーマがトニー賞好みだけど作品の造りはオーソドックス。ノミネート数の差にもそれが現れている。
あと”Tootsie”より”Be More Chill”を入れるべきだった。”Tootsie”は全体的にノミネートされすぎに感じる。

Best Revival of a Musical

“Kiss Me, Kate”
“Oklahoma!”

今年はそもそもリバイバル作品が2作品のみ。
“Kiss Me Kate”を制作したRoudabout Theatre は過去の名作を再演することを目的とした非営利団体で、これまでの傾向を見る限り奇をてらわないオーソドックスな演出をする方針で価値観の変化に焦点を当てない演出もあえてなのかなと想像する。対して”Oklahoma!”は物語そのものには手を入れないが、現代の価値観では違和感を覚える部分を強調することで問題提起をする演出。
両作品とも内容が現代の価値観と合わなくなってきているなかで、トニー賞が評価するのは後者の姿勢でしょう。
バランスが取れたものより一点特化のインパクト重視の演出は大好きなのだが、なぜか”Oklahoma!”には乗り切れず、かといって”Kiss Me Kate”が受賞すべきとも思わないので、予想だけで希望はなし。

Best Book of a Musical

“Ain’t Too Proud: The Life and Times of the Temptations”: Dominique Morisseau
“Beetlejuice”: Scott Brown and Anthony King
“Hadestown”: Anaïs Mitchell
“The Prom”: Bob Martin and Chad Beguelin★●
“Tootsie”: Robert Horn

”The Prom”の売りはLGBQT問題をテーマに据えたことで、脚本で獲らなきゃどこで獲るんだ!?
劇中ではほとんどの問題が解決しないという点をプラスとするかマイナスとするかで脚本の評価が大きく変わるが、個人的には”都会のリベラル”と”田舎の保守”の対立に対して安易な歩み寄りを描写せず問題提起に留めているのは逃げではなく誠実さだと考える。とはいえ、レズビアンの娘と母親の歩み寄りすら描かれない脚本が難ありとされる可能性もある。”The Prom”じゃない場合、Jersey Boys路線の”Ain’t Too Proud”、ファミリー向けエンタメの”Beetljuice”、オープニングナイトに女装をバラすのはおかしくない?など色々と粗が目立つ”Tootsie”を外して、消去法で”Hadestown”かな。

Best Original Score

“Beetlejuice,” music and lyrics: Eddie Perfect
“Be More Chill,” music and lyrics: Joe Iconis
“Hadestown,” music and lyrics: Anaïs Mitchell
“The Prom,” music by Matthew Sklar; lyrics by Chad Beguelin
“Tootsie,” music and lyrics: David Yazbek
“To Kill a Mockingbird,” music by Adam Guettel

”Hadestown” デキシーランドジャズ風の楽曲ではトロンボーンソロを大きくかつ何度もフィーチャーするなど、全体的にライブを思わせるつくりがミュージカルとしては異色。2幕冒頭の曲ではバンドメンバーの紹介まであるなど野心的な作り。やっぱり受賞に値するかな。
”Be More Chill” ゲームを思わせる電子音(俗に言うピコピコサウンド)を多用しながらテルミンという珍しい楽器を取り入れるなど演出効果も重視するなど意欲的で他の部門ですべてスルーされながら唯一ここでノミネートされたのも納得だが受賞まではなさそう。
”The Prom” 古き良きミュージカル風、黒人教会音楽風のコール・アンド・レスポンス、ダンスミュージックなどなど多彩なジャンルで聴きごたえがあるしポップでキャッチーなナンバー達は突出するところはなくとも魅力にあふれていて受賞してもおかしくない。いや受賞してほしいw
ストレートプレイの“To Kill a Mockingbird”は未見だが楽曲賞をストレートプレイが受賞することはないはず。14部門ノミネートの”Hadestown”がその勢いで受賞しそうな気もするが、個人的には”The Prom”を押す。

Best Direction of a Musical

Rachel Chavkin, “Hadestown”★●
Scott Ellis, “Tootsie”
Daniel Fish, “Oklahoma!”
Des McAnuff, “Ain’t Too Proud: The Life and Times of the Temptations”
Casey Nicholaw, “The Prom”

ノミネート作品の中で最も演出が尖っているのは”Oklahoma!”
”Hadestown”は個々の演出要素は必ずしも斬新とはいえないがトータルではうまくまとまっている。じゃあ”Oklahoma!”と言いたいんだけど難解すぎるきらいがあるのが気になるところ。
他の3作品は演出面では大きな特徴はない。

Best Leading Actor in a Musical

Brooks Ashmanskas, “The Prom”★●
Derrick Baskin, “Ain’t Too Proud: The Life and Times of the Temptations”
Alex Brightman, “Beetlejuice”
Damon Daunno, “Oklahoma!”
Santino Fontana, “Tootsie”

ここも”The Prom”が穫れる可能性がある部門。Brooks Ashmanskasはキャラが立っていて素晴らしかった。他があるとすれば、男性が女性のフリをするという難しい役どころが評価されて”Tootsie”のSantino Fontanaか。
“Ain’t Too Proud”のDerrick Baskinは見られなかったが、ノミネート発表後にアンダーが出ていることが受賞はないという本人の判断を示唆しているのかもしれない。

Best Leading Actress in a Musical

Stephanie J. Block, “The Cher Show”
Caitlin Kinnunen, “The Prom”
Beth Leavel, “The Prom”★●
Eva Noblezada, “Hadestown”
Kelli O’Hara, “Kiss Me, Kate”

まず”The Prom”から2人ノミネートされたのは痛い。(票が分散される懸念がある)Beth Leavelは助演女優では良かったのでは?大体”The Prom”から男女合わせて3人も主演にノミネートされてるってどうなの?主演が3人だよw Caitlin Kinnunenもとても良かったけど、どちらか選ぶならBethかな。そもそも”The Prom”は主役カップルよりBW組の方が押出しが強い。
“The Prom”じゃないとすれば”Hadestown”のEva Noblezadaだろうか。主演のReeve Carneyより遥かに魅力的だった。
“Kiss Me, Kate”のKelli O’Hara は無いです。だってキャラにあってないもの。彼女には知的な役が似合います。というかそれ以外ハマらないというか。

あと”Beetlejuice”のSophia Anne Carusoがノミネートされていないのはおかしい!“The Cher Show”のStephanie J. Blockより彼女を入れるべきだったのでは?Beetlejuice役のAlex Brightmanに食われることなく輝いていた。

Best Featured Actor in a Musical

André De Shields, “Hadestown”
Andy Grotelueschen, “Tootsie”
Patrick Page, “Hadestown”
Jeremy Pope, “Ain’t Too Proud: The Life and Times of the Temptations”
Ephraim Sykes, “Ain’t Too Proud: The Life and Times of the Temptations”

助演男優は難しい。
“Hadestown”と”Ain’t Too Proud”から2人ずつノミネートされているだけあって、この2作品はすごかった。よって”Tootsie”のAndy Grotelueschenはない。両作品を比べると”Hadestown”がキャストに作品の出来が左右される度合いがより大きい。そこで”Hadestown”から物語を引っ張る狂言回し的存在Hermesを演じるAndré De Shieldsと予想するが、”Ain’t Too Proud”のJeremy Popeの強烈さは忘れられないので押しておく。ストレートプレイとミュージカルで2つノミネートされているのも納得。

Best Featured Actress in a Musical

Lilli Cooper, “Tootsie”
Amber Gray, “Hadestown”★●
Sarah Stiles, “Tootsie”
Ali Stroker, “Oklahoma!”
Mary Testa, “Oklahoma!”

“Hadestown”のAmber Gray で決まりでしょう。前述のAndré De Shieldsに引けを取らない存在感だった。
もしもがあるなら”Oklahoma!”の2人のどちらか。甲乙つけがたいがエラーおばさん役のMary Testaかな。Ali Strokerも目立ったが車椅子の印象に引っ張られた感もある。やっぱりそれが狙いなんだろうか?

Best Scenic Design of a Musical

Robert Brill and Peter Nigrini, “Ain’t Too Proud: The Life and Times of the Temptations”
Peter England, “King Kong”
Rachel Hauck, “Hadestown”
Laura Jellinek, “Oklahoma!”
David Korins, “Beetlejuice”

三重に回る盆の一番内側は奈落へ沈み冥界を表現するなど”Hadestown”が印象深く本命っぽいが、”Hadestow”一色はつまらないので”Beetlejuice”で。Winter Gardenの大きな舞台を装置で埋めつくすなどお金かけてやることやっている印象。装置デザインはエンタメ作品が不利ってこともなさそう。受賞はないだろうが”King Kong”は巨大パペットのコングだけじゃなく舞台装置も凝ってる。

Best Costume Design of a Musical

Michael Krass, “Hadestown”
William Ivey Long, “Tootsie”
William Ivey Long, “Beetlejuice”
Bob Mackie, “The Cher Show”
Paul Tazewell, “Ain’t Too Proud: The Life and Times of the Temptations”

今シーズンは芸術性が高いとかインパクトがあるなどの衣装はなかったので、やはり作品自体の評価が高く世界観にマッチしていた”Hadestown”か。
装置と並んでド派手な”Beetlejuice”もあり得る。“The Cher Show”の衣装も派手で見応えがあったが、そもそもCherのツアーの衣装の再現のようで賞レース的にはどうなのかと。

Best Lighting Design of a Musical

Kevin Adams, “The Cher Show”
Howell Binkley, “Ain’t Too Proud: The Life and Times of the Temptations”
Bradley King, “Hadestown”★●
Peter Mumford, “King Kong”
Kenneth Posner and Peter Nigrini, “Beetlejuice”

照明は”Oklahoma!”が面白かった。大部分は客席が明るい状態で進行しつつ、突然全暗転状態になりそのまま芝居が続くなど印象的だった。が、ノミネートされてないからなあ。
他で選ぶなら”Hadestown”か”Beetlejuice”

Best Sound Design in a Musical

Peter Hylenski, “King Kong”
Peter Hylenski, “Beetlejuice”
Steve Canyon Kennedy, “Ain’t Too Proud: The Life and Times of the Temptations”
Drew Levy, “Oklahoma!”
Nevin Steinberg and Jessica Paz, “Hadestown”

ここは”King Kong”では?テーマパークショー的な”King Kong”だが、音響も爆音で普通のミュージカルとは違う作り込みが効果的だった。
そうじゃない場合は、やはり”Hadestown”になるか。カテコでは出演者全員によるマイク無しのアカペラナンバーに泣かされた。

Best Choreography

Camille A. Brown, “Choir Boy”
Warren Carlyle, “Kiss Me, Kate”
Denis Jones, “Tootsie”
David Neumann, “Hadestown”
Sergio Trujillo, “Ain’t Too Proud: The Life and Times of the Temptations”★●

なぜ”The Prom”が入っていないのか分からないw
けど、仮に入っていたとしても”Ain’t Too Proud”で間違いない。ハッタリを効かせた振付が”Ain’t Too Proud”の大きな魅力であり、大量ノミネートにつながる作品評価を大きくあげていると感じた。”Choir Boy”は未見。

Best Orchestrations

Michael Chorney and Todd Sickafoose, “Hadestown”
Simon Hale, “Tootsie”
Larry Hochman, “Kiss Me, Kate”
Daniel Kluger, “Oklahoma!”
Harold Wheeler, “Ain’t Too Proud: The Life and Times of the Temptations”

“Oklahoma! 元のクラシックなオーケストラ編成を大胆にもカントリー風にアレンジ。コントラバス、チェロ、バイオリン、バンジョー、ギター、エレキウクレレ?、アコーディオン、琴のように弦を貼った楽器(多分エレキ)<初めて見た&名前が分からない、に加えて主役のカーリーもギターを持つ。クラシック調じゃないが間違いなく”Oklahoma!”という見事なサウンド。”Oklahoma!”は好きじゃないが、このアレンジは素直に凄い。
個人的にはAin’t Too Proudを押したい。見に行く前に予習で聞いたTemptationsには古臭さを感じていたが、舞台ではとても洗練されたおしゃれサウンドでカッコいい!”Hadestown”もトロンボーンを大きくフューチャーし、何度もソロを取らせるなどとても印象的だった。

まとめ

個人的にはThe Promが内容も良くて大好きだが、Hadestownの年になるのだろう。それからAin’t Too ProudはJukebox系だからと食わず嫌いで見ないのはもったいない。King Kongも同じ。ミュージカル作品としては微妙かもしれないが一見の価値はある。

そのKing Kongを含めた映画原作4作品、Pretty Womanだけノミネート0と極端に評価が低いのが違和感あり。Tootsieの11ノミネートとそこまで内容的に差があるとは感じられず、オープン時期が去年の夏で審査員が覚えていないだけでは?とさえ思うw
この4つの中で最も意欲的な造りなのはKing Kongで、次がお金をかけてファミリーミュージカルとしてやるべきことをやってあるBeetlejuice、TootsieとPretty WomanはBW上演で箔をつけ原作映画の知名度も利用してツアーで設けるよ!というのがあからさますぎ。

Be More Chillの評価が低すぎるのも疑問。これも審査員が自分たちに響かないからといって、正当に評価できていないだけはないか?通常の学園モノから大きく外した人気者ではないヒロイン設定や、Squipによって校内ヒエラルキーが上がった後もそのヒロインへの思いを貫く主人公など、評価すべき意欲的な部分はたくさんあったはず。

賞レースに不思議はつきものとはいえ、なんだかなぁ…
とはいえ、これで6/10(月)朝8時よりビール片手にトニー賞を見る準備は整ったw
AvenueQのクロージングに合わせたため春のBW詣が5月下旬になりトニー賞授賞式まであまり日にちがないが、コメント欄/ツイッターなどで意見をいただければとても嬉しい。

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