大所帯の魅力!Fiddler on the Roof

      2016/10/24

今回の観劇旅行で1番良かったのがコレ、Fiddler on the Roof (屋根の上のバイオリン弾き) です。
全部で9本の枠なのに3回も見てしまいました。1回のBW旅行で同じ演目を3回見たのはMary Poppinsが閉幕する時以来です。
いや、今回どころか今までの観劇体験全ての中でもTOP10に入る感銘を受けましたね。
このカンパニーによる再演は本当に素晴らしかったです。

私はFiddler自体が初見で、映画版を見た印象は面白いんだけどちょっと古臭くて地味かな~って感じ。
ところが実際に見ると地味だなんてとんでもない。古臭さも全く気にならない。
オープニングのTraditionが圧倒的で、1曲目で完全にノックアウト。
正直なところ、それほど期待していたわけでもなかったFiddler on the Roof のどこにそこまで魅了されたのか?

それはキャストとオケで総勢50名を超える人数が生み出す圧倒的なパワー

私にとってのFiddlerの魅力はここにつきます。

ちなみに今回見た作品のキャストとオケの人数をプレイビルで数えてみました。

 キャスト人数オケ人数キャスト+オケ総数
Watress21627
Holiday Inn231639
The Producers241640
The Color Purple17926
Falsettos7613
Matilda the Musical251540
Fiddler on the Roof322254

表記の仕方が作品によって違ったりするので正確な比較にはなっていないかもしれませんが、キャスト・オケともにFiddlerが群を抜いて大所帯。
Fiddlerの計52人の次に多いのはProducersとMatildaの40名ですが、10名以上の差があります。
演目が違うので単純な比較はできませんが、この差はかなり大きい。さらに30人を超えるキャストを上手く活かした迫力ある演出。
これこそがBROADWAYの魅力だと感じたのです。

今回のFiddlerを見て以来、色々な動画を見ているのですが、大人数での上演はFiddlerという演目がもともと持っている要素のようです。
それに加えて今回はとてつもなく広い舞台を用意した。
おそらく、これは今度の再演版の特徴なんだと思う。
上演されているBroadway Theatreはもともと大きな舞台を持った劇場なのですが、前列の座席を2列削ってオケピットを超えた客席側に銀橋を設置、舞台セットは最小限で広大なステージを大人数のキャストが縦横無尽に駆け回るのです。

劇場に入ると緞帳はしまっておらず舞台上が見えるのですが、ステージ奥に”Anatevka”と書かれた看板が吊るされ、手前に1つの椅子が置かれているのみで他にセットはありません。
アナテフカという地名は架空のものらしいですが、厳しい寒村を思わせます。
物語は椅子のそばに現れたテヴィエが語り始めることでスタートするのですが、いつの間にか現れたアナテフカの住人たちがテヴィエの掛け声でTraditionを歌いだすと舞台上が一気に生命力に満ち溢れるのです。
もうねー、これがホントに痺れるわけ。なんど見ても鳥肌モノです。(といっても3回しか見てませんがw)

残念ながら今回の再演版の動画が見つからなかったのですが、直近のオーストラツアーと前回再演時のトニー賞パフォーマンスの動画がありました。

オーストラリアの動画を見ると大人数キャストであることは同じですが、Broadway Theatreとは舞台の大きさが全然違います。
このTraditionは、どこかのどかでスピード感やパワーが今回の再演とは決定的に違うんですよね。

前回再演はMinskoff Theatreで(残念ながら私は行ったことがないです)、座席数を見る限りBroadway Theatreと同規模。現在ライオンキングを上演していることからも大きな劇場だと思われます。
ですがトニー賞のパフォを見る限りは、先のオーストラリアツアーと似た感じの振り付けで、舞台セットもそこそこ組まれているのでやはり今回の再演とは違った雰囲気を想像させます。

今回の再演のTraditionは、本当に強烈だったんですよ。なんで動画ないかなぁw
セットは何もなく(途中可動式の衝立が出てくるだけ)、広い舞台を上手く活かし、大人数のスタッフが躍動感あふれる振り付けで魅せてくれるのです!
Traditionはハッタリが大事な曲だと思うのですが、そこが素晴らしく上手く出ている。

他にも1幕にはアンサンブルが活躍するナンバー To Life, Tevye’s Dream, Wedding Dance があるのですが、どれもエネルギッシュで見ごたえがある。

Wedding Danceはトニー賞のパフォーマンスの曲なのでご自身の録画を見直してくださいw(iTunes Storeでも買えます)
これらの曲はどれも舞台セットがシンプル。そのかわりにダンスを始めとしたパフォーマンスで魅了してくれます。
全体的に舞台装置は驚くほどシンプルです。でもセットの豪華さはいくらお金をかけても映像にはかなわないし、舞台で見たいのはセットではなく生身の人間から直に伝わってくるエネルギーなんですよね。
キャストの人数の多さはダンスナンバーだけじゃなく、Sunrise, Sunset や Anatevka のようなコーラスナンバーでも効果を発揮します。
おそらくAnatevka ではマイクを通さず、肉声のみでハーモニーを聞かせていたと思います。(オケはアンプを通した音でしたが)
個人的には、ソロ曲だけじゃくコーラスで聞かせるナンバーがあるのがミュージカルの醍醐味なので、歌の面でも頭数を揃えているのは魅力です。
さらにはオーケストラ。流石に去年のKing & Iの30名には負けますが、それでも20名超のオケはやはり聴き応えがある。
もちろん舞台装置に力を入れる作品もあっていいのですが、Fiddlerはそこに重きをおいていない。
あくまで人間のパフォーマンスで魅せてくれる。

春に見たDavenport TheatreのDaddy Long Legsは小さな劇場、最小限の人数で極上の舞台を体験させてくれました。
対象的に今回のFiddler on the Roofでは、大きな劇場、大人数から生まれるパワーに圧倒されます。
仮に映像で見たとすると、両者は共に”いい舞台だな”という同じ感想になりそうなのですが、生の舞台では全く違う体験となる。

とにかく、コストをセットではなく人間の数にかけていることがFiddler on the Roofの魅力です。

 

最後にトレーラー。すごい迫力でしょ?
これだけでご飯3杯はいけますw

 - Fiddler on the Roof, Musical