Camelot

      2023/04/23

リンカーン・センターによるリバイバル公演。BW初演は1960年で何度か再演もされているが直近のBWリバイバルは1993年なので30年ぶりのBW再演ということになる。古すぎる作品なのでこれまで興味がわかず詳しいことは知らなかったが、楽曲と作詞はAlan Jay Lerner & Frederick Loewe で My Fair Lady を手掛けた2人である。

アーサー王の話はなんとなくしか知らなかったので、初演のミュージカル版を元に制作された1967年公開の映画版を観劇当日にホテルで見てから劇場に行った。正直なところ映画版を見るのは結構辛かった。175分もの長さがある上に50年以上前の映画なので、今の感覚で見ると単調でただダラダラと長いだけに感じてしまう。

配信サイトのあらすじには、

”英国国王・アーサーが築こうとしていた理想郷・キャメロットで、その悲劇は起こった。王に忠誠を誓うため、フランスからはるばるやってきた高潔な騎士・ランスロット。しかし、こともあろうに、彼はアーサー王妃・グエナヴィアと恋に落ちてしまい…。”

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とまるで導入部のように書いてあるのだが、この恋に落ちる瞬間が1幕終了時点で映画では約半分経過したところ。そこまでほとんど盛り上がる場面もないのだが、後半に入っても見せ場的な場面はない。モードレッドの登場でようやく物語が少し動きだし集中して見られるようになった。ここまで全然評価していないのだが、最終的な物語のオチは結構気に入っている。脚本に問題があるんだろうなあ。

今回の再演版だが、物語の大筋は映画と同じなのだが細部は結構違っていたように思う。まず1幕は約90分だったので映画と同じくらいの長さだが、2幕は60分ぐらいなので映画に比べるとかなり短い。
1幕は割と映画に近い展開だが、ランスロットがグエナヴィアにそそのかされた3人の騎士と決闘するシーンで、3人目の騎士との決闘になるところでアーサー王が割り込んでくる。その結果死にかけるのは3人目の騎士ではなくアーサー王である。
2幕では映画には存在しないモーガン・ル・フェイというアーサー王の異母姉?が出てくる。WIKIによると1964年以降すべてのプロダクションでモーガン・ル・フェイ役は削除されているあるので映画版はその脚本を元にしているだろう。とにかく2幕は映画より大幅に短い上にこのモーガン・ル・フェイの存在があるので映画版の展開とは結構違っているが、オチは同じである。

今回の再演版は、脚本家のAaron Sorkinと演出のBartlett Sherが改訂を加えているそうなので、モーガン・ル・フェイも復活したのだろう。WIKIのキャスト欄の注釈には2幕はコメディ要素を抑えるためにモーガン・ル・フェイをカットしたとあるが、彼女とアーサーのシーンはコミカルどころかシリアスだったので、単純に復活させたのではないはず。

実は演出がBartlett Sherだとは知らずに見に行ったのだが、舞台セットを見た瞬間に2016年再演版のFiddler on the Roof に似てる!と感じ、同じくここVivian Beaumont Theatreで彼が演出したKing & I と役者の入退場の仕方や広い舞台上の歩かせ方もそっくりだったので、もしかして…と幕間に確認するとやはりBartlett Sher演出だった。が、よく考えるとリンカーン・センターの再演ものは私が見たKing & I と My Fair Lady だけじゃなく数多く手掛けているので当然だったw

彼の演出は先に上げた3作品共ものすごく好きなのだが、今回はなんか普通に感じた。慣れてきただけかもしれないが、King & I の冒頭で船がオケピに覆いかぶさるシーンや、My Fair Lady 2幕の舞踏会シーンでオケピットにいたはずのオーケーストラが演奏中に舞台奥からスライドしてくるなどのインパクトがある仕掛けが今回はなかったからなあ。

結局、生で見る舞台のほうが印象は良かったが、映画版で感じた退屈な印象が大きく覆ることはなかったかな。Wikiによると、この作品は脚本は駄目だが楽曲は素晴らしい!という評価だったらしいが、個人的には楽曲も刺さらなかった。My Fair Ladyは好きなので、楽曲の魅力も脚本の良さがあってこそ伝わってくるのかもしれない。

  • 物理セットとしての円卓が出てこなかった。当然映画にはあって後半の内乱的騒動で象徴的に破壊されていたので期待していたのだが。
  • 舞台奥が階段になっていて、冒頭そこから人が登場するのがFiddler on the Roofで懐かしさを感じるとともにアツかったね!
  • そしてこの広い舞台をわざわざ端から端まで歩かせて入退場させるのがKing & I で、まさにBartlett Sherの集大成といった感じ
  • 衣装や鎧にちょっとアジアっぽいテイストが入っているように見えたが、どういう意図があるのだろうか?
  • モードレッドはアーサー王の物語では隠し子だったり甥だったりするらしいのだが、このミュージカルではどちらなのか分からなかったというか聞き取れなかったようだ。英語力の問題だねw
  • 1967年の映画版はU-NEXTで配信されている。(31日間の無料トライアルあり)

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