Some Like It Hot

   

楽曲と作詞がMarc ShaimanとScott WittmanのHairsprayコンビ、演出と振付がThe PromやSomething Rotten!やThe Book of MormonのCasey Nicholawで今回1番期待していたのがこの作品だが、若干肩透かしを食らったというか…見ごたえがあって楽しいんだけどちょっと惜しいと感じた。
ビリー・ワイルダー監督でマリリン・モンローが出演していた映画「お熱いのがお好き」のミュージカル化で主人公2人とヒロインは禁酒法時代のビッグ・バンドのメンバーという設定なので、ビッグバンドジャズをバックにタップダンスナンバーがこれでもかと畳みかけ派手で見ごたえのある豪華な古き良きブロードウェイ風の新作ミュージカル。
とにかくダンスダンスダンスで最初から最後まで踊りまくる。ビッグバンドサウンドも迫力があって、セットも衣装も豪華でお金もかかっている王道で大好きなタイプのミュージカルだった。なのだが、どこか物足りないというか…なんだろう?事前に期待値を上げ過ぎたかw

一つは主演コンビの一人、ジェリー役のJ. Harrison Gheeが見られなかったこと。TKTSでチケットを買って「よっしゃ見るぞ!」と盛り上がっていた当日開幕直前にJ. Harrisonの怪我でその日は休演となり、まさか見られないのか?…と顔面蒼白になるも、その日休演することでアンダーのリハを行い翌日からは再開される事になり首の皮一枚繋がって一安心。結果、今回遠征のラストを飾ることとなったSome Like It Hotに膨れ上がった期待で、もう観劇前から気分は最高潮!w
J. Harrisonの代わりに出ていた方もたった1日のリハで本番3公演目とはとても思えない出来だったと思う。なんだけども来日Kinky Bootsのローラ役、Mrs. Doubtfireのアンドレを見た私には幻のJ. Harrisonのジェリーがどうしても脳裏にチラつくのだ。ローラもアンドレも女装する似た系統の役なので、彼の演技がなんとなく想像できるんだよね。もちろんそれは単なる妄想で大外れなのかもしれないが、J. Harrisonはジェリーにハマってそうな気がするのだ。アンダーの方もそれを踏襲しているのか似た傾向にあるように感じたが、どうしても物足りなく感じてしまい最後までその印象は抜けなかった。

もう一つ物足りなかったのが楽曲。基本的には好みのタイプで平均点は高いのだが、コレだ!という1曲がなかったように思う。よくよく考えるとMarc Shaimanはちょっと惜しい人なのだ。楽曲は好みの問題も大きいからあくまで自分にとってではあるが、Catch Me If You CanもSmashもいいんだけど決定打に欠ける印象で、Charlie and the Chocolate Factoryに関して微妙だった。でもミュージカルにハマるきっかけにもなったHairsprayが最高すぎて、いつも期待してしまうんだよ!そしていつも高すぎる期待値に裏切られる結果になるというw ただ楽曲は何度も聞いていると耳になじんでくることもあるのでキャストアルバムを聴き込んだら再評価したい。

なんだかんだ文句を言っているが、決してデキが悪いわけじゃないし群舞も盛りだくさんでダンスミュージカルが好きなら見て損はない今シーズンおすすめの1本ではある。

  • 上の写真で分かるようにオケピットがあるのだが、実は管楽器は舞台の2階部分に並んでいて、ビッグバンドシーンではキャストが楽器を構えている上にのホーンセクションが見える演出になっている。コレはアツい演出で悪くないのだが、1幕が始まっていきなりそれを見せてしまうのがもったいない。途中何度も隠れたり現れたりするのだがそれがせわしないし、インパクトが有るのは最初だけなのよね。先日の日本版Hairsprayでもオケはセットの2F部分にいたが、そのときは2幕後半のミス・ヘアスプレーを選ぶシーンで初めてオケが現れる演出になっていたのが好印象だった。こういうのはやはりここぞというときにとっておくべきだと感じる。
  • 原作映画の女性で笑いを取るという手法には現代の価値観だと問題なので、ジェリーが女装をする羽目になったことをきっかけに自身がもっていたジェンダー意識に目覚めるという展開に変更されている。コレについては正直良くわからない。物語的に違和感はなかったので失敗ではないと思うが、徹底的にエンタメ志向の作品なので、そこがこの物語が伝えたい軸なのかというとそうでもない気がして…
  • ダンスシーンがタップメインなのだが、実はタップはそれだけではなく、序盤と後半にあるギャングからの逃走シーンもタップを取り入れたアクションになっている。特に後半のシーンは2幕のクライマックスでもあり見せ場なのだと思うが、どことなくドリフを感じてしまって…コメディなので問題はないのだがw
  • 主役コンビのもう一方ジョー役のChristian Borleはしばらくぶりだったが、ずいぶんとおじさん体型になっていた。にも関わらず彼もめちゃくちゃ踊っていた。彼がそんなにもダンスな人だとは知らなかった!
  • ヒロインのシュガーとジョーのカップルの下りも少し現代に合わせてアレンジされていたようだ。単に2人が結ばれて終了ではなく、ハリウッドスターになるという夢を持つシュガーをジョーがマネジメントするという対等以上を思わせる関係を描いた落とし所になっている。
  • シュガー役のAdrianna HicksはSixに出ていたのだが、残念ながら彼女では見ていない。でもColor Purpleにも出ていたようなのでそちらで見ているかもしれない。
  • メインの3人が所属するビッグバンドのコンダクター役にいくつかショーナンバーがあるのが意外だった。てっきりビッグバンドのショー部分はシュガーの独壇場だと思っていたから。そして彼女も歌ウマで芸達者だった。
  • ビッグバンドのショーシーンは団員役の女性アンサンブルキャストの見せ場にもなっているんだけど、楽器を演奏するだけでなく歌って踊れるビッグバンドってどうよ?って思わなくもないw まあこれもコメディなので突っ込んでも仕方ないけどさw
  • 次回、枠に余裕があればJ. Harrison Gheeでリベンジしたい思いもあるのだが、どうしたものか。キャストアルバムを聴き込んで望むとまたもや期待が膨らみすぎて更にがっかりしかねない気もするw

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