Once on this Island 演出の力って素晴らしい!

      2018/10/04

Once on This Island 今回は演出をメインに全編ネタバレです!
見に行かれる方は観劇後にどうぞ。

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扉をくぐるとそこは…

劇場に足を踏み入れると、島の生活を思わせるオブジェが客席後方までそこかしこに設置されているのが目を引きます。
Circle in the Square はその名の通り縦長の長方形舞台を見下ろすようにぐるりと客席が取り囲む円形劇場。
舞台は島を模していて一面に砂が敷かれています。ワクワクしますよね!
舞台正面は通常の劇場の舞台袖にあたり客席の下は舞台裏に通じているのですが、そこには土嚢が積まれ水が引かれています。ちゃんと海もあるのです。
客席の後ろにはロープに吊るされたおびただしい数の洗濯物、他にも様々なオブジェが設置されているのは、島の生活水準をほのめかすためでしょうか?
舞台上に目を移すと数名のキャストが…既にお芝居は始まっているのです。
会場のそこかしこに目を奪われる中、あちこちの通路から次第に出演者が現れ、島の日常風景が繰り広げられます。
最前列だと足元は砂浜で客いじりも体験できますよ♪

そうこうしているうちに物語が始まります。
既にどっぷり浸った島の雰囲気に加え、明るくトロピカルなアンサンブルナンバーが観客を一気に物語の世界に引き込みます。

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考え抜かれた演出

前半の農村の場面もダニエルが事故に遭うシーンで実際に雨を降らせるなど見ごたえがありますが、特筆すべきが中盤の演出。
ティ・モーンがダニエルを追って島の反対側の町にたどり着いた時、この舞台セットに隠された意図が見えてきます。
ダニエルが担ぎ込まれるホテル内の一室、それは舞台上に敷き詰められた砂浜の下から現れるのです!
舞台中央に敷かれていたシートがめくり上げられると砂浜の下には絨毯が敷かれてあり、そこに傷ついたダニエルが休むベッドが持ち込まれる。
舞台上では、この砂のない約3メートル四方の空間のみが島の反対側にある富裕層の住む世界です。

この場面転換による島の両側の世界の対比は圧巻でした。
農村の場面でも様々な小物の出し入れにより舞台上は何度もその場所を変えていますが、自然を表す砂浜の下から人工物である床が現れるインパクトは絶大。
ティ・モーンとダニエル、二人の住む世界が全く違うことを強烈に示唆しているわけです。
彼女の看病でダニエルは回復し再び歩けるように。彼はベッドを離れる時に靴を履きます。
一方ティ・モーンは彼のもとに来てからもずっと裸足のまま、二人が同じ未来を歩むことはないと暗示しているんですね。

ベッドが撤去され絨毯も巻き取られると今度はタイル状の硬い床がむき出しとなり、場所は舞踏会会場へ変化。
ティ・モーンはダニエルの友人アンドレアに舞踏会でダンスを見せて欲しいと頼まれるのですが、ドレスを着てヒールを履いた彼女はうまく踊れません。
招待客の失笑をかう中、ティ・モーンは遂にヒール脱いで村のダンスを踊ります。周囲はあっけにとられますが、ホテルの従業員が次々と加わり踊りは白熱していきます。
その一方で舞踏会の参加者は彼女を軽蔑するようにその場を後にします。やはり二人の住む世界は違うのです。

ティ・モーンのダンスを見た後に、アンドレアは彼女に結婚式で踊って欲しいと頼みます。アンドレアとダニエルは幼い頃からの許婚なのです。
今の自分も出自も変えることはできない、結婚なんてできない、君も分かっていると思っていたと告げるダニエル。
そして周囲の招待客は舞台中央に取り残された彼女に…ではなく、彼女が崩れ落ちる硬い床そのものに砂を覆い被せます。
そこがお前の世界だと言わんばかりに。

砂浜とむき出しの床、靴を履くダニエルと靴を脱ぐティ・モーン、本当に印象に残る演出でした。

動画の最後に花びらが舞うところが少し映っていますが、終演後の砂浜はかなり乱れており最初の状態に戻すのはかなりの労力がかかるはず。マチソワの日は特に大変そう。
手間暇を惜しまない姿勢が今回のOnce on This Island の魅力を生み出しているんでしょうね。

その素晴らしい演出を手掛けたのはMICHAEL ARDEN、知らない名前だと思って調べてみると俳優さんでもあるんですね。
なんと2015年の春にThe Hunchback of Notre Dame のPapermill公演、主役のカジモドで見ていましたよ!
(すいません、ただの自慢ですw)

 

レア・サロンガ

あと皆さん気になるのはレア・サロンガですよね?
OoTIを見てみよう!というキッカケも彼女が出演しているからという人は多そうです。
彼女は島の四人の神様の一人、Erzulie役。
一応ソロナンバーもありますが、主役のティ・モーン以外は全員がアンサンブルと言ってもいいバランスのため突出した見せ場があるわけではないです。
開演前も他のアンサンブルと同じようにかなり早い段階で舞台上に現れます。
筆者の座席のすぐ横の通路を頻繁に出入りしていましたが、最初あまりに普通の服装で荷物を抱えて出てきたのでスタッフかと思いました。
ちなみにレア様の一番の見所は開演前の携帯電話絡みの小芝居かなw

 

その他の雑感

  • 前述の通り、舞踏会でのティ・モーンのダンスシーンは農村と町の人間の溝を浮き彫りにしていたと記憶しているのですが、WIKIのあらすじではここで町の人間の賞賛を得たとあるんですよね。
    記憶違い?誤解?それとも初演時から内容変更された?ここが一番の疑問点です。
  • 前回触れたように、筆者はハッピーエンドが大好きで悲劇は好みじゃない、更にセリフがない歌進行のミュージカルも苦手です。
    それでもOoTIにハマったのはなぜか?好み関係なく出来が良いものは心に響くといえばそれまでですが、ちょっと考えてみた。
    前者については、悲恋の物語の割には長調で明るい曲が多いからかな。ラストも明るく締めるしね。
    後者の歌進行が苦手…に関しては、色々考えた結果気付いたのが…一つはセリフ部分は少ないけれど完全に無いわけではない。
    おそらくそれ故に、Something Rottenで揶揄されていたw「時には延々と同じ音程 最後だけ違う音 こんなふうに」という部分がない。
    そっかー、歌進行の何が苦手だったのかようやくはっきりした~
    確かにアレが不自然に感じるんだよな。音楽的に聴き応えがあるわけでもないし。(あくまで個人の意見です)
    なんかスッキリしましたw

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  • 入場前にキャストボードを見てこんなに子供が出ているんだ!と楽しみに見ていたのですが、ラストに“Why We Tell The Story”で冒頭の少女が学校で物語を語って聞かせる同級生役としてほんのちょこっとだけでした。
    Thanksgiving Paradeのパフォーマンスの最後にも映っています。
    少女がティ・モーンとダニエルを表す人形を手にしていて、ちょっとMatildaを思い出しました。
  • これはColor Purple を見たときにも感じたことですが、キャストに白人が一人もいないにも関わらず、客席の圧倒的多数は白人層。
    BWミュージカルって出演者や制作陣以上に観客側が白人文化なんだなぁ…とあらためて感じました。
    そういえば、モルモンがトニー賞獲った時にクリス・ロックが作品賞発表スピーチで「黒人はミュージカル見ないんだYO!」的内容で笑いをとっていましたよね。

 

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連日TKTSに出ているOnce on This Island ですが、筆者が見た日は最終的に完売していましたし、グロスを見ると客数的には満席に近く、TKTSでの値引率も下がってきています。
これからMy Fair Lady という大作が控えているので受賞するかはともかく、TONYのリバイバル作品賞でのノミネートは確実と感じました。

先に読んで興味を持たれた方も是非劇場に足を運んでください!

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