どうなる主演男優賞?

   

2019トニー賞授賞式を目前に控えウキウキ気分のはずなのだが、嫌な予感がするのでここで吐き出しておくことにした。

それは主演男優賞についてである。個人的にはThe PromのBrooks Ashmanskasでキマリなのだが、どうも向こうの掲示板などを眺めているとTootsieのSantino Fontanaの受賞を予想する声が多いようだ。確かに売れない男優が女装してBWにデビューするさまを演ずるSantinoは良かったしファルセットの歌声にも驚いた。でもBrooksが演じる落ち目のBWのゲイ俳優がどれほど魅力的だったか!Santinoに一歩も譲らない。主観でいうならBrooksが勝ってる。
そして作品全体の評価に目を向けると、総合力ではThe PromがTootsieの上だと考える人が多いことはドラマデスクの結果にも表れている。もちろん作品賞と主演男優賞など俳優個人を対象とする部門に分かれている以上、たとえ作品自体の評価はイマイチだとしても素晴らしい演技をしていれば俳優はノミネートされるべきで、作品の評価と出演者の評価は切り離すべきである。だからこそThe Cher ShowのStephanie J. Blockが主演女優にノミネートされているのだろう。

でもここで思い出されるのが去年の同じく主演男優賞の結果。The Band’s VisitのTony Shalhoubが受賞しSpongebobのEthan Slaterが涙をのんだ件である。
当初からBand’s VisitのTonyが本命とはいわれていたが、ひょっとするとSpongebobのEthanもありうるのでは?という意見も多かった。それはディズニーなどこれまでのアニメ原作作品とは一線を画す作風のSpongebobで魅力あふれる唯一無二のキャラクターを作り上げたことを高く評価されたから。一方Tonyの演技ももちろん素晴らしいものだったが、The Band’s Visitは映画をある程度忠実に舞台化しているため創造力という点でSpongebobのEthanに軍配が上がると思ったわけだ。更にいうとTonyはThe Band’s Visitの中で1曲しか歌わない。それもキャストアルバムでわずか1分の曲だ。もちろんミュージカルでも歌わない役があってもよいが、さすがにほぼ歌わない主役が受賞するのはミュージカル作品に対する評価としてはどうなんだろうという疑問が残った。
はっきりいえば、作品全体としての評価で主演男優含めあらゆる部門の結果にバイアスがかかったんじゃないの?と思うわけ。
Band’s Visitはイスラエルとアラブの交流という時代にあったテーマを描くトニー賞好みの作品であり、一方のSpongebobは徹底した娯楽作品であり概してトニー賞はそういったエンタメ系作品に対する評価は厳しい。実際Band’s Visitはノミネート11の内ほぼ全ての10部門で受賞したのにに対し、Spongebobはノミネート数は12とBand’s Visitを上回るも受賞は1部門のみ。

話を今年のトニー賞に戻すと、候補者の演技に甲乙つけがたいのであれば、エンタメ要素が強いTootsieのSantinoよりLGBTQ問題という超トニー賞好みのテーマのThe PromのBrooksが受賞しないと去年と真逆の結果となり、トニー賞の評価ってブレブレじゃないのー!!!とまた悶々するはめになるのではないかと心配しているのだ。うだうだと書いてきたが杞憂に終わってくれることを切に願う。

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