Carousel

   

Carousel 本当に素晴らしかった!
豪華なオーケストラサウンドにオペラ顔負けの歌ウマキャストに聞き惚れ、豊富なアンサンブルナンバーはバレエを基調としており十二分に見応えあり。
タイプこそ違えどHello, Dolly! と同じく古き良きBWミュージカルの王道、名作と呼ばれるだけのことはあります。タイトル通り回転木馬のように夢見心地な2時間45分でした。

実は見るかどうかかなり悩んでいました。以前、映画版を見てなんて退屈な作品なんだろうと感じたから。でも見ておいてよかった。
今年はミュージカルの新作が少なく枠に余裕があったことが幸いした。もし新作が枠に収まらなければ真っ先にカットしていたはずw

映画を見た時にはつまらないと感じていて音楽も、今は初演版のサントラを聞き返しているほど印象が変わりましたね。

 

キャスト

とにかくメインキャスト全員歌が上手い。
ジュリー役のJessie Mueller は、これまでBeautiful, Waitress とポップス系のミュージカルを見てきたため、クラシック系を歌う姿を見るのは新鮮でした。上手い人は何でも歌えますね。
とはいえ彼女はポップスの方が味があるような気もします。
そして主役のビリー役のJoshua Henry、ジュリーの親友カップルのLindsay Mendez, Alexander Gemignani とジュリーの従姉妹ネティ役のRenee Fleming の4人は更に上手く感じたので、オペラ系の人達?とも思ったけど、経歴を見るとそうでもないようです。なんとJoshua Henry とAlexander Gemignani はViolet で見ていました。Lindsay Mendez のWicked エルファバ役も時期的に見た可能性が。(Playbillが見当たらず確認できず)
キャリー役とミスター・スノウ役のLindsay Mendez, Alexander Gemignani は歌だけじゃなく芝居も上手かった。共に三の線の演技で存在感は抜群、ストーリー的にもメインカップル二人と違って感情移入しやすいので存分に楽しめます。

アンサンブルにはJess Leprotto がいた。彼はNewsies とHello ,Dolly! でも見たけど、今回はメチャクチャ目立つ位置で踊ってました。Newsies といえばRyan Steele も出ているんだけど、どこにいるか分からなかったのが残念です。

演出

サントラを聞くと1曲目は歌なしなので序曲だと考えていたけど、冒頭からアンサンブル総出演でダンスダンスダンス!
この時点でノックアウト。楽しめないのでは?という懸念は一気に吹き飛びました。
特に凝ったことはしていないんだけど、回転木馬のセットがなかったのは驚き。
正確にはビリーがスイッチを入れる場面で1台だけ象徴的に木馬が出てきますが、木馬が回る大掛かりなメリーゴーランドのセットはありません。序曲の最後に屋根だけが上から降りてきて、その下でアンサンブルがダンスを踊ることでメリーゴーランドを表現。
全体的にダンスシーンは多く力も入っていますが、思い返すと冒頭の回転木馬のシーンはその象徴なのかもしれません。

一番好きなシーンは”June Is Bustin’ Out All Over”  Renee Fleming の歌に加えて次々に繰り出されるアンサンブルダンスは圧巻です。

 

ストーリー

惜しむらくはストーリー部分が全く楽しめないこと。全く共感も感動もできません。
主人公のビリーがとにかくクソ野郎。さらにヒロインのジュリーがなぜビリーと一緒にいるのか理解できない。
ビリーが生きているうちはまだいいとして、犯罪者として死んだ後も娘に彼のことを良い人だった風に伝えているなんてダメンズにも程があるw
おまけに一日だけ地上に戻ったビリーにぶたれた娘にまで痛くなかったの!とか言わせて、主役とはいえビリーにも良いところはあると思わせたいのかもしれませんがとても無理。
ビリーは地上に戻るときにも星をパクっているのにスターキーパーは見て見ぬふりをしたり、娘の卒業式を見たいから1日の滞在期限を延長してくれと言う希望が受理さるなど特別扱いされる理由も分からない。
とにかく納得いかないところだらけなのです。

美しい音楽に歌ウマキャスト、目を見張るばかりのダンスシーンに酔いしれるのがCarouselの楽しみ方で、物語部分はおまけどころ無視した方が良いw
サブカップルのキャリーとミスター・スノウの愛すべきバカップルぶりにのみ救われます。

 

映画版との違い

  1. 映画版は既に死んでいるビリーが天界?(Backyard of heaven 天国の裏庭らしい)からビリーとジュリーとの関係を回想する体で物語が進むが、舞台はビリーがジュリーと出会うところから始まる。
  2. Starkeeperは最初から舞台上にいるが現世の登場人物からは認識されておらず、ビリーの死後はじめて彼がどういう存在か明らかになる。
  3. 映画版ではビリーは恐喝行為に失敗し逃走を試みる際に事故死するが、舞台では追い詰められ逃げ場をなくし自殺する。

覚えているのはこのぐらいかな。

1,2に関しては一幕ではStarkeeperに暗めのピンスポットを当てることで他の登場人物とは違うことを匂わせるにとどめ、二幕でビリーの死後はじめて正体が明らかになる舞台の展開の方が素晴らしいと思いますが、少なくとも当時の映画ではそういう手法は難しかったのかもしれません。加えてわかりやすくする意図もあったのかも。
どちらにしても映画版冒頭の作り物の星を糸で吊るしている天界は今見ると明らかにショボい…

3に関してはキリスト教の世界観では自殺は悪で、自殺した人間が天国へ行くことはないと思っていたので少し驚きました。軽くググると必ずしもそういうわけではないようですが。
でも映画版で事故死に変更されているのは、やはり自殺は良くないと捉えられているからではとも思ったり。

映画は舞台に比べてストーリー部分が目立ってしまうのが印象が悪い理由でしょうか。音楽やダンスを楽しむ手法としては生の舞台にはどうしても生の舞台にはかなわない。逆に舞台はストーリーのダメさを生のパワーで押し切っているともいえます。

上げたり下げたり散々ですが、ストーリー以外は見応え満載。リバイバル作品賞はCarousel とMy Fair Lady の一騎打ちになることは間違いないはず。
自分と同じく、事前情報ではイマイチひかれないなーという方も見たほうが良いです。

写真はRUSHで$40のBOX席、多少見切れるとはいえメチャクチャ楽しめるよ!

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