The Outsiders

      2024/06/06

2024.5.26 15:00 Jacobs Theatre

今期の新作で原作小説が映画化もされているタイトルがいくつかあるのだが、予習で見た映画版が一番つまらなくて、正直見なくても問題ないのではないか?と悩んだこの作品だが、トニー賞12部門ノミネートで演出がおもしろいらしいという意見を見かけたので見ておくことに。(今回こればっかw)

W4Eと同じく具体的な舞台セットはあまりなく小道具を使った見立てによる演出だったので、ストーリーは響かないながらも退屈はしなかった。W4Eと同じく列車のシーンがあるのだが、こちらではタイヤの上に板を渡したその上にポーニーボーイとジョニーが乗り、アンサンブルキャストが板を揺らしていた。他にも舞台後方に鉄骨主体の足場が組まれているなどW4Eに似た感じの演出が見受けられたが、この作品の最大の見せ場は2幕のランブルシーンにあった。

1幕開始前からステージ上にいるポーニーボーイ

2つの不良グループの総力戦ともいえるランブルシーンがあるのだが、ここが独特の表現になっていて非常に見ごたえがあった。導入部こそ歌がついているがその後はBGMすらなく、バックにあるのはステージ上に降らせている雨の音と殴り合いのパンチ音のみ。(雨の音はスピーカーからも流している)乱闘シーンなのだが、フォーメーションのように全体で統一された振付があり、ドラムセットのスネアのようなパンチ音に合わせて全員が同じタイミングで殴り合う。前半は二人一組での殴り合いだが、途中集団から外れたポーニーボーイが群舞のリーダー的にパンチを繰り出すとそれに合わせて残りのキャストがのけぞったりたおれたりし、最終的には彼も含めた全員が敵味方関係なく一方向を向き、パンチ音に合わせて同じリアクションをとる。ダンスではないが群舞のようなアクションは整然としており美しさも感じた。
下の動画でその一部が感じられるが、序盤から感じていたWest Side Story的な印象はやはり意識されていたんだとインタビューからもはっきりした。2つの不良集団の対立、持っていたナイフでつい相手を刺し殺してしまうなどのストーリーからWSSへのオマージュ的な作りにすることとしたのかもしれない。(それとも原作小説の時点でWSSへのリスペクトはあったのか)全体的に群舞が多めな構成だが、このランブルシーンに関しては単なる群舞にとどまらないアクションシーンとすることでオマージュでありながら差別化も図っているのだろう。動画の最後でこれまでに見たことが無いような…と表現されていて、私も劇場でそう感じたのだが、ネットの感想を見ているとJの舞台っぽいらしいw
そういわれてみるとほぼ若い男性キャストで占められるこの舞台は元J向きといえそう。青春群像劇を表現するためか楽曲にもユニゾンパートが多くてそこもむいているかもね。日本上演を手掛けるのは元Jになるの…か?

少し気になったのが喫煙シーンの多さ。物語の時代背景やキャラクター的に仕方ないのだろうが、未成年がタバコをバンバン吸ってポイ捨てしてるのはかなり気になる。あと教会が燃える場面の直前にもポーニーボーイが舞台の中央で気持ち奥の方に向かってポイ捨てしていたのだが、もしかしてあれは教会が火事になった原因なのだろうか?その部分に明確に触れられていたのかどうかの記憶がないのだが…
繰り返しになるが物語的には本当に乗れない。例えば、日本では盗んだバイクで走りだす…はもはやかっこよくないような気がするのだが、アメリカではそんなこともないのだろうか?
ジョニーが死ぬシーン以降は周りのあちこちから鼻をすする音が聞こえてきた。涙腺が弱いことには自信があるのだがw個人的には全く泣けない。この辺アメリカ人にしか分からないノスタルジーかなにかがあるのか謎だ…

カテコ後EXITミュージック中に舞台上で夕食をとる3兄弟

  • ランブルシーンではBGMが無いのでパンチ音に合わせたアクションシーンをどうやって合わせているのか気になった。イヤモニ(をしていたどうか分からないが)のクリック音か、指揮者モニター的なものでカウントダウンを見ていたのか、それとも全く別の何かか
  • ラスト3兄弟の夕食シーンで閉めるのだが、その後のカテコでキャストが捌けた後に3兄弟は再びテーブルテーブルについてEXITミュージック間に用意した食事を実際に食べる演出がおもしろい。頭上のスクリーンにはバンドが映っている。
  • 対立する2つの不良グループとか持っていたナイフでつい刺し殺してしまうなどWest Side Storyを連想させるが、アメリカでよくあるモチーフなのだろうか?ついでにダンスシーンに力が入っているのもWSSっぽい。
  • これもRUSH列が長く、週末はTKTSにも出ていなかったので、メザニンの後方席を買ったのだが、最大の見せ場であるランブルシーンのフォーメーションを上から一望できたので、結果としてよかったと思う

 - Musical