BHSミュージカル研究所 〜五線の向こう側〜

      2018/12/11

「BHSミュージカル研究所」という団体が開催しているミュージカル講座を聴講してきました。
今年はじめて開講されたコースで今回は3回目、テーマは 『ノートルダムの鐘』作詞作曲の分業と兼業。
ツイッターのリツイートで宣伝が流れてきて興味を持ったものの、東京までの交通費もかかるしなぁ…とグズグズしていたところ実際に参加された方から面白かったから来るべきと誘われたので参加してみることに。
期待通り…いやそれ以上の面白さでした。

以下、単なる個人の覚書レベルですが、印象に残ったことをメモしておきます。

 

  • 詩先?曲先?
    作詞が先か?作曲が先か?これずっと疑問に思っていました。
    ポピュラーミュージックの世界では圧倒的に曲先らしいのですが、ミュージカルはどうなのか?
    ミュージカルの場合は物語が先にあるので詩先も多いのではないかと思ってたのですが、やはり曲先が主流だそうです。
    ただし、詩先にせよ曲先にせよ作業に取り掛かる前に作詞家作曲家で(場合によってはプロデューサーなども加わって)とことんディスカッションし、その曲のイメージなどを固めてから作業に取り掛かる。そして曲先の場合、韻を踏む箇所は作曲家が決めるんだそうです!これはかなり驚きましたが、同じモチーフが反復する場合、その最後の箇所で韻を踏みたいわけだから、作曲家が決めることになるわけか。
  • 韻について
    英語(というかヨーロッパ系の言語?)では韻が大切だということは知識としては持っていましたが、同じ音で終わる単語を調べる辞書まであるそうです。作詞家の必須アイテムだとか。類語辞典みたいなものか。こんな個人ブログ書いてるだけでもたまに類語調べたりするものね…
    韻には男性韻と女性韻があり、男性韻は1つの強いアクセントの音節で押韻、女性韻は2つの音節で押韻することで2つ目はアクセントが弱くなるそうです。
  • 作曲は数学だ!
    …とまでは言っておられませんでしたが作曲家が使うアナリーゼの手法はかなり数学っぽいらしいです。私も一応楽譜は読めますが、音程の1度2度という呼び方を久しぶりに思い出しました。この程度で助かったw
    鐘の形を音符で作ってコピペ(模倣、反復、反行)で散りばめていく…こうやってBells of Notre Dameは作られているのだそうです。更にはそれが他の曲のモチーフとしても何度も登場する。
    そうやって全体の統一感が生まれるんでしょうねー(これは私の感想)
  • Made of StoneはAlan Menken作曲ではなくStephen Schwartz作曲
    Stephen Schwartz本人が自伝でWickedのNo Good DeedとMade of Stone(ともう1曲他の作品の曲の計3曲)は兄弟のようなものだと述べているとか。
    2曲は歌詞に似た箇所があり、さらには聖書の1節とほぼ同じ言い回し。
    また聖書か!ことあるごとに聖書やシェイクスピアが基礎教養として求められるのよね(これも私の感想)
  • WickedのPopularは韻を踏み倒している
    これは作詞作曲両方手がけるStephen Schwartzだからこそできること。特に彼は作詞に強みがあるそうです。
    何となく分かります。だってノートルダムの鐘をはじめとする一連のAlan Menkenとのコンビ作品では両方かけるにもかかわらず作詞のみを求められているわけだから。

などなど、既に忘れちゃってることもたくさんありそうですが、面白い話がたくさん聞けました。これで4000円は安すぎる!
だって講師の方は東京芸大作曲科卒業の超音楽エリート、そしてこれは商品として開発された講座というよりは、御自身の個人的な趣味としてのミュージカル研究のごく一部をファン向けに分かりやすく紹介したものなのです。
もちろんそんなことはおっしゃられていませんが、一体どれだけ時間をかけて準備されたのか…という密度。しかも時間内に収まらなくて一部カットになるほどコンテンツは用意されていましたw
これは仕事じゃなくて愛ですよ!受講生みんなそう思ったんじゃないでしょうか。

 

講座の後に、厚かましくも質問に答えていただくことまでできました。

  • 海外ミュージカルが日本語化されるときに、字数の関係で4部音符を8部音符2つに割るなどして言葉を乗せることがよくあるが、こういった行為は作詞作曲家の許可なくできるのですか?

できるんだそうです。ただ岩谷時子先生(とおっしゃられてました)はレ・ミゼラブルやミス・サイゴンの訳詞を手がける際に、そういうことを逐一海外スタッフに相談確認していて、その姿勢によって作詞作曲家から絶大な信頼を受けていたんだそうです。黎明期っていいなーと感じるエピソードでした。

  • Stephen Schwartzはキャリアの初期でPippinなどの成功を収めていたのに、Alan Menken作曲で自身は作詞のみという扱いに甘んじることになったのは失敗作が続いたからでは?にもかかわらずWickedという超大作で再び作詞作曲両方を任されたのはなぜ?

そのあたりは彼の自伝に詳しく書かれているのでぜひ読んでみましょう!だそうです。
英語だけど…頑張ります…

 

以上、作品だけじゃなく理論的なことや周辺知識まで含めて作品を楽しみたい人にはおすすめです。

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