Funny Girl

   

トニー賞ミュージカルリバイバル作品賞対象4作品の中で唯一ノミネートされなかったのがこのFunny Girl。作品全体で見ても助演男優賞のみノミネート1という結果。そんなに微妙なのかと不安な気持ちで観劇したが、そんなこともなく良い出来だったと思う。ただ特筆すべき部分も特になく古典作品をごく普通にリバイバルしたという印象。もちろんバーブラ・ストライサンドの初演版は見ていないのでオリジナルそのままの演出であるかはわからないが、例えば2019年のOklahoma!のリバイバル版のような古典作に今上演すべき意味をもたせるような演出ではなかった。まあOklahoma!ほど現代の価値観では受け入れがたい内容でもないので大きく変える必然性もないのかもしれないが、Oklahoma!と同じ2019年のKiss Me Kateあたりと似た「古典作品はやはり今の作品とは根本的に作り方が違うよね」という印象。それでも2019年リバイバル版Kiss Me Kateは受賞はしていないものの4部門でノミネートされているので、今回のFunny Girlが助演男優賞のみの1部門しかノミネートされていないのは何故?という疑問はある。作品賞にしても主演のビーニー・フェルドスタインにしてもノミネートはされても良いのではないかと思う。ビーニーは2017年リバイバル版Hello, Dolly!でも見ていて、脇役ながらそのコメディエンヌっぷりは好印象だった。その時と同じく今回のFunny役にハマっていたと感じたのだが、この数年でトニー賞的には評価の方向性に何らかの変化があるのか、オリジナルのバーブラ・ストライサンドの壁は厚くてその印象には負けてしまうということなのか。Funny Girlは1964年初演と50年以上前なのだがバーブラは1968年の映画版でも主演しているので今劇場に足を運んでいる人たちでも見ている人は多い。今回の再演を見て映画版はかなりシリアスに寄せているし物語や楽曲にも変更があったので、私的には別物として見られてあまり比較することもなく楽しめたのだがバーブラ・ストライサンドはスーパースターの領域にあるので特にここアメリカではどうしても見劣りしてしまうのかもしれない。(私は特に思い入れもないけど)

先程少し触れたビーニーも出演していた2017年リバイバル版Hello, Dolly!がこれもスーパースターであるベッド・ミドラーを主演に起用し、舞台セット、衣装、オケや出演者の数などとにかくお金をかけた超豪華プロダクションになっている一方で、演出に関してはおそらくほぼオリジナル通りで再演されていた。(その代償としてチケット価格がものすごく高かったのだがチケットは売れまくっていた)その時のHello, Dolly!を見た感想はまさにスターありきの作品で客席の熱狂にも凄まじいものがあったので、作風や内容が現代とはちがう古典作品を再演するに当たってはOklahoma!のように今上演する意味をもたせるようにアップデートを図るか、Hello, Dolly!のように圧倒的な物量やスター性による暴力的に観客を揺さぶるなど、なんらかのウリを持たせなければもはや賞レースにも絡めず、かといってシアターマニア以外を取り込んで儲けることもできないのが今のブロードウェイなのだろう。特に今年はHello, Dolly!路線のヒュー・ジャックマン主演のMusic Manが同じリバイバル作品として上演されているのだから。

以下とりとめのない気付きなど

  • オケでハープっぽいフレーズが聞こえてきたが多分キーボードだった。古典なんだからこういうところに金かけてほしい
  • 貴重なラミンのダンスが見られた。更にシックスパックも披露w
  • ラミンはBWではアナスタシアといいあまり作品に恵まれていないと思う
  • 更にGleeのスー先生でおなじみのジェーン・リンチもFunnyの母親役で出演しているのでビーニー一人に観客の目がまとまらないのでは?
  • ジェーン・リンチが出ているってことは、やはりFunnyには当初同じGlee出身でDon’t Rain on My Paradeが持ち歌のリア・ミシェルを考えていたのでは?
  • そういえば前の席の女性が2幕にはいなくなったので視界がひらけてよかったw

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