Kimberly Akimbo

      2022/12/12

本当に素晴らしかった!

もうすぐ16歳の少女キンバリー・アキンボは早老症という難病を患っているため彼女の容姿は老人そのもので、彼女を演じるVictoria Clarkは63歳だそうだ。年相応の見た目なので当然違和感を感じるわけだが、舞台が始まってしばらくするとそれらしく見えてきて気にならなくなる。衣装が高校生らしい服装であるとはいえ演技だけでそう信じさせる、役者の力ってすごいと改めて感じた。

設定だけ聞くと辛い話を想像するし実際そういう展開もあるのだが、物語はコメディタッチで進行し実際客席からも終始大きな笑い声が聞こえる。正直笑っていいのか?というようなネタもあるのだが、キンバリー自身が明るくあっけらかんとしているので重い雰囲気にはならない。流石に後半にはキツイ場面もあるのだが、最終的にハッピーエンドとまではいえないにせよ悲劇ではなくコメディらしく後味も悪くないし、一種の爽快感もある。極端に重い話はあまり得意じゃないので個人的にも助かるのだが、本当にうまくできている。

楽曲も良かった。メロディもキャッチーで親しみやすいナンバーが多いし、バンジョーやバスクラリネットをうまく使ってどことなくコミカル聞こえるようにアレンジされているのが物語にとてもマッチしている。しかもその楽曲を奏でるバンドは舞台上に終始見える状態でいるわけ。まさに至福のひととき!
楽曲を担当したJeanine TesoriはFUN HOMEも手掛けていて、言われてみればその雰囲気は感じられる。(作詞、脚本はFUN HOMEとは別の方なのだが、曲だけでなく全体としての雰囲気も近い気がする)

とにかく脚本、楽曲、キャスト、演出、舞台セット、どれをとってもスキがない。ダンスは殆どないが総勢9名の少人数の舞台だしドラマ重視の内容的にもそこを求めるのは違うだろう。今季のイチオシになるかはまだ分からないが有力候補。トニー賞にも多数絡んでくるはず…なのだがグロスがイマイチなのが心配だ。(直近で座席販売数キャパに対してが77%しか売れておらず、体感でも空席は目についた)

  • 上のレコーダー風の画面は開演前の舞台だが、物語が始まると母親がビデオレコーダーでメッセージを録っている。当然どこかで出てくるはずだと誰しも思うわけだが、その利用方法がベタな予想の範囲を超えて上手いのなんのって…
  • 授業で研究発表のテーマにキンバリー自身が患う病を選んでしまう、その病の患者の平均寿命が16歳なのに誕生日パーティーがあるなど、どう考えても辛くなりそうなのにそうはならず、重くなりすぎない(他に辛い展開はある)
  • 主演以外の役者も素晴らしかった。母親役のAlli Mauzeyを絶対見たことあるはず!と調べるとWickedだった。確か2013年だった思うが彼女のGlindaは歌も上手いがコミカルで最高だった。
  • Kimberlyのその他同級生4人の存在もおもしろかった。物語の進行にも多少関わってくるが、4人でコーラスグループ組んでいるので、楽曲のバリエーションを出す効果もあったのよね。あと本筋には全く関係なく笑いのネタ担ってただけの要素だが、この男女2人ずつの親友ペアがそれぞれゲイとストレートで各自報われない思いを抱えているのも今風の設定?
  • 初日からロトに応募し続けて6回目で当たった。最前列がロト席らしく見上げる感じにはなるが、タップがあったりするわけではないのでまあ良かったかな。
  • Booth Theatreは初めてだったが、どこから見ても大丈夫そうな小さめの劇場だった。小規模作品が似合う感じ。

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