Paradise Square

   

これは本当に素晴らしかった!
内容的に暗く重いものを想像していたが、意外にもそういう印象は薄かった。もちろん物語は後半に進むに連れてどんどん重くなっていくのだが、とにかくダンスシーンがふんだんで曲調も明るめの物がそこそこあるので、内容ほどに息苦しさは感じなかった。

物語は群像劇で複数の登場人物のストーリーが並行して進行し、あらすじを簡単にまとめるのが難しい。実際観劇前はついていけるか不安だったが、案外振り落とされずにすんだ。そういう意味ではわかりやすい展開なのかもしれない。

物語は実際の事件ニューヨーク徴兵暴動(Wiki参照)をクライマックスに据えて進行する。スラムの酒場パラダイススクエアに集うアイルランド系移民と奴隷から開放された黒人はともに低所得の底辺住民としてそれなりに仲良くやっていたが、南北戦争への徴兵令をきっかけに人種間の軋轢が高まっていく。白人は徴兵の対象であるが$300(現在の価値で$6600)を支払えば徴兵を逃れることができる。だがアイルランド系移民にはそんな大金はとても払えない。一方黒人は市民ではないため徴兵の対象外で、奴隷解放のための南北戦争に参戦したくとも許されない。とこのぐらいの予備知識(で観劇した)があれば割りとついていけるはず。もっと予習するなら公式サイトにある各批評を読めばあらすじが分かる。

アイリッシュ系の楽器を利用しそれっぽいフレーズをはさみながらもロックやポップス調の曲が多く、それほど民族音楽色は強くない。そして分厚いバックコーラスも聞けるなど、楽曲はとても好みのタイプだしとにかく熱くてカッコいい!

“Paradise Square” from Paradise Square the Musical

ダンスシーンには確か3,4回ビッグナンバーがあったはずだが、とても見ごたえがある。白人はアイリッシュダンス、黒人はタップやSTOMPなどで見られる体を叩いてリズムを出していくパフォーマンスがメインで、双方のダンスバトルもある。助演男優賞にノミネートされている双方を代表する2人のダンスも素晴らしいのだが、アンサンブルキャストによる群舞にもまた圧倒される。トニー賞のパフォーマンスが楽しみすぎる!(が後述の”Let it burn”かも知れない。せめてメドレーで群舞も入れてくれー)

Turn My Life Around – Paradise Square

歌もキャスト皆上手いし全体的に良いのだが、2幕のラストでパラダイススクエアに火が放たれたときに主演のJoaquina Kalukangoが歌う”Let it burn”は本当にすばらしく、ここでスタンディング・オベーションによるショーストップが起きた。劇中のスタオベは久しぶりだ。ツイッターのTLでは見られた方が何人もここでスタンディング・オベーションになったとコメントしているのでほとんど毎回なのではなかろうか?主演女優賞は固いと思う。グロスが6割程度で空席が多いのでロングランは難しそうなのが残念すぎる。

  • Joaquina Kalukangoの主演女優賞へのノミネートは当然だがChilina Kennedyも助演女優賞にノミネートしてほしかった。(主演でもいい)そのぐらい彼女のパフォーマンスも良かった。調べるとBeautifulでJessie Muellerのあとにキャロル・キング役を演っていたようだ。そりゃ歌の迫力は十分だよね。
  • 途中何度か聞いたことがある気がするメロディーがあった。劇中にスティーブン・フォスターをモデルにした人物(もしかすると本人?)が登場するので、彼の曲からの引用があるのかもしれない。軽くぐぐってみたがわからなかった。
  • アイリッシュダンスは上半身は不動で腕は動かさないものと思っていたが、この作品では腕も使っていた。伝統的なダンスと庶民が酒場で踊るものには差があるのかも知れないが。
  • なんとなくNewsiesを思い出したのは舞台セットと闘争が話しの根幹にあるからか。
  • 今回、MJ, The Music Man, Paradise Square と歌って踊れるアンサンブルを多数揃えた作品を3作品も見ることができ、BWの役者の層の厚さには驚かされるばかり
  • マチソワでロトに応募してマチネが当たったのだが締切時間前にメールが来た気がする。実際ハズレのメールは何時間も後に来た。よほど売れてないのか?

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